今年の4月に国民健康保険の改訂が行われ、今までは、白い材質を使って歯に被せることができたのは、CAD/CAM クラウンだけでしたが、今回の改訂で、はめ込むインレーまで白い材質が使用できるようになしました。適用範囲は、一番奥の歯(第二大臼歯)以外の歯は可能です。この白い材質とは、コンポジットレジンの塊から、CAD/CAMという機械を使用して、クラウンやインレーなどの補綴物を削り出して作るのもです。
もう少し詳しく説明しましょう。CAD/CAMとは、制作するクラウンやインレーをコンピューターで読み取り、そのデータを基に、大きな塊からそのデータ通りに機械で削り出すというものです。このCAD/CAMによって作られるクラウンが歯科治療の保険適用になったのは、2014年からで、当初は小臼歯のみに適用とされていました。その後、2017年には、小臼歯の後ろの第一大臼歯まで適用が広がり、さらに2020年に前歯部にも適用が広がしました。そして今年2022年に歯にはめ込むインレーもクラウンに準じて適応となりました。これにより、患者さんの歯の状態で、適用できない場合もありますが、原則的に、一番奥歯(第二大臼歯)以外は全て金属以外の白い材質で治す事が可能になりました。
では、保険適用のCAD/CAM クラウンやインレーなどの補綴物はどのようなものなのでしょうか。同じ白い材質として従来から使われているものがセラミックです。
まずコスト面では、セラミックによる補綴物は自費治療となり、保険適応のCAD/CAM の補綴物で治療した場合は費用が十分の一以下となります。これは患者さんにとって大きなメリットとなります。ではなぜ10倍近い差があるのでしょうか。
一番大きな理由は制作過程が大きく異なるためです。CAD/CAM の補綴物は機械で制作するため、2時間程度で完成しますが、セラミックの補綴物はパウダーを手作業で固めて形を作り、炉を使って1000度以上で焼成し、冷まして修正し仕上げるため、最低2日かかります。
また、歯の治療で虫歯になって失った歯の一部を、各種の材料で修復して元に戻す場合、理想的な材質は自分の歯と同じものが一番です。しかし、実際は人の歯と同じ材質の修復材料が存在しません。そのため、次に良い材料とての条件は、できるだけ歯に近い材質が良いとなります。ではその条件は具体的には、硬さ、強さ、色、などで比較しますが、セラミックは人の歯より少しだけ、硬めですが、強さや色は本来の歯に近い性状をしています。しかしCAD/CAM の材質は、硬さ、強さ共に弱く、色は時間と共に変色していく性状です。この理由は、セラミックは金属と同じで、材質の劣化がないですが、CAD/CAM に使用するコンポジットレジンは吸水性があり、その影響で材質が劣化し、磨耗や脱離、変色の原因となっています。
このように、CAD/CAM は補綴物として問題はありますが、白い材料を使用しても治療費が低くできる材料であり、金属ではなく、CAD/CAM クラウンやインレーを選べる事ができる時代になったことは、患者さんにとって大きなメリットと言えます。